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和紙と写真の出会い

Culture    • 2018年05月09日

Text: Senda Mayu

瞬間を切り取り、過ぎていく時を保存するための写真。デジタル化が進み、複製も大量保存も容易になる中で、その「一枚」にどれくらいの価値があるのだろうか?自らが感化された風景を写真に収め、後世まで残し伝えていくために、細川和紙とプラチナ・パラジウム・プリントという技法を融合させたフォトグラファーが、小林伸幸さんだ。

『Portrait of Nature 〜Myriads of Gods〜』

自然の圧倒的な存在感を写し出した、珠玉の写真集。(※和紙ではありません)

定価5.800yen+税/収録写真62点/モノクロ/発行:窓社

和紙に印画するということ

小林さんは、谷野裕子さんが作った細川和紙に作品を印画し、国内外で個展を行っている。繊維同士をからまり合わせ、薬品を使用せずに作られる手漉き和紙は、「1000年後も変化することなく残る」と言われる。保存性の高い和紙に印画することで、遥か未来に生きる人々に作品を残すことが可能となる。また、和紙独特の温かい風合いが、作品に他にはない雰囲気を与えてくれる。同じものが一枚としてない手漉き和紙に印画された作品は、この世に唯一無二の作品ということになるのだ。

プラチナ・パラジウム・プリントとは?

1873年にイギリスのWilliamWillisが、プラチナを用いた印画技法を発明した。プラチナの価格高騰により一時は衰退するが、優美で深みのある色みと、環境による影響を受けない安定性から、再び注目を集める。手間がかかる技法だが、何ものにも代えがたい美しさ、質感が魅力。現代はプラチナとパラジウムの2種の金属を使用することで、プラチナの高コストと技術的問題を解決することが可能になった。

小林さんの世界観

万物には神が宿るとし、自然を愛で、崇拝してきた日本人。昨今の環境問題は、その心が失われてきたためではないかと小林さんは嘆く。しかし、破壊と開発が進む中でも、残り続けてきた自然と対峙するとき、「先人達も同じ風景を見て、そこに神を見出していた場所かもしれないのだ。そう思うと、僕はそこに綿々とした雄大な時間の流れを感じる」と、撮影したいという思いを掻き立てられるのだという。先人が見た風景を、後世の人に――。だからこそ彼は、和紙とプラチナ・プリントという方法を選んだ。

SENDA MAYU/ kilala.vn

小林伸幸

小林伸幸

1970年埼玉県生まれ。1991年に東京写真専門学校を卒業し、編集プロダクションの専属カメラマンを経て、1993年にフリーランスに。2001年にNYでFine artsとAlternative printを学び、細川和紙とプラチナ・プリントを融合させた作品作りを開始する。台湾、アメリカ、ヨーロッパ、フィンランドなど、活動の幅を世界に広げて活躍中。2011年以降は、東日本大震災を写真で復興支援するプロジェクトも行う。

Website:
zenne-inc.com
vimeo.com/91495217

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