ベトナム人が日本の陶器を好きになるわけ
Culture
Text: Thanh Binh / Photo: Pixta / Translator: My Phung, Inako
よい火加減で巧みに作られたエナメル色の美しい日本製の陶芸品は、ベトナムの古物コレクターにも好評です。ベトナムでは、この10年ほど、高級陶器だけでなく、家庭用陶器においても多くの家庭で日本製が使われてきました。
素朴さの中に隠された価値あるもの
日本の陶器は、主に柿右衛門様式と伊万里焼、九谷焼、鍋島焼という4つの流派に分けられます。その中で、九谷焼と鍋島焼は大名御用達であり、民間では普及しなかったことから、日本国外には知られませんでした。その一方、柿右衛門様式と伊万里焼の陶器は海外にたくさん輸出されたため、日本を代表する高級陶器として外国人、とりわけヨーロッパ人に人気です。
日本人にとって、家庭で使う陶器は、美しく、日常生活に役立つと同時に、暮らしの中で新たないろどりを与えてくれるものといえまます。
家庭用陶器は、命を支える要素である土と空気、火、水の組合せで作られます。日本人は、大きくて派手なものよりも、天然、素朴、繊細で小さなものを好みます。そうしたことは、成熟していて、暖かい心があり、思慮深く、流行に流されないことを模範とする日本人のライフスタイルにふさわしくもあります。
日常生活の中で日本人の陶器への扱い方を観察することで、不完全なものに隠されたところにあえて美を見出し、完璧なものへと近づけようとする日本人の精神が垣間見えるはずです。
日本人は、失敗したら終わりではなく、努力と強い信念こそあれば「不幸」もまた「幸せ」に変えることができ、十分な結果を得られると考えます。そうした考えは、壊れた陶器の修復方法(特別な接着剤で破片をくっつけ、最後にその裂け目を隠す「金継ぎ」)にも見られ、「わびさび」にも通じます。「わびさび」は、日本の芸術や建築、ライフスタイルなどにも見られます。
ベトナムにおける日本の陶器
ベトナムでは、日本の陶磁器が数百年前から渡来しています。広南国時代(ベトナム語: ĐàngTrong、17〜18世紀)からベトナムと日本の間で交易があり、日本の陶磁器はその早期に輸入されました。中国の陶磁器とヨーロッパの陶磁器のほか、たくさんの伊万里焼の鉢や柿右衛門様式のお皿、茶碗、花瓶がフエの宮殿で使用されていました。現在のサイゴンとハノイには、伊万里焼、柿右衛門様式、九谷焼の花瓶、礼拝するための瓶「チョエ/Choe」、ボトル、お皿などを所有するコレクターがたくさんいます。日本製の家庭用陶器も、ここ10年の間に多くの陶器店で見かけるようになりました。
日本陶器店のオーナーの多くは収集しながら販売している。Ngo Thoi Nhiem・Nguyen Gia Thieu通り(ホーチミン市3区)の角にある日本の陶器店もこうしたお店の1つ。
このお店のオーナーは約10年前から日本の陶磁器を収集し、販売してきました。家庭用陶器であってもエナメル色や繊細な造形が優れているとのお客様からの評価で、日本の陶器はよく売れるそうです。以前はビエンホア省の陶器を中心に収集していましたが、今では1000点以上の日本製陶器が揃っています。オーナーは、日本の12種類の花柄のカップを所有していますが、それは売らないことにしたそうです。
日本のファンであるNhu Anさん(ホーチミン市10区在住)は、「今、お店でもオンラインでも日本の陶器が買えますが、私はオンラインよりもお店で買い物するのが好きです。オーナーさんとのお話しや家族のような暖かい雰囲気でゆっくり大好きな陶器を探しているとリラックス効果にもなりますね」と話してくれました。様々なグレードのある日本の陶器ですが、ベトナム市場では、そのほとんどがデザインと品質の良い「中程度」のものが売られていて、多くの人が商品を信頼しているそうです。小さくて、繊細なディテールが刻まれ、優雅な色使いで、触ると荒さが感じられるような日本の陶器がAnさんの好みだそうです。
現在、日本の陶磁器は以前ほど高価ではなく、手頃な価格で購入できます。日本の陶器を愛する人々にとって、このように美しく繊細なものを簡単に手に入れることができるというのはかつてないことです。
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