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独占インタビュー・琉球デザインに魅了されスニーカーに描くアーティスト

Nhân vật    • 2018年01月01日

モナシュ大学(オーストラリア)の建築デザインの卒業生であるラ・クォック・バオさん(La Quoc Bao)は、2018年にニヤット・ビン(Nhat Binh)をモチーフにしたコンバースシューズのコレクションをソーシャルメディアで発表し有名になった。
ニヤット・ビンとはグエン王朝の王女がカジュアルな服装として着用した古代ベトナム衣装のひとつである。

彼はフエ王室・グエン王朝のモチーフに触発されただけでなく、ベトナムと通ずる文化を持つ中国、日本、韓国などにも関心を寄せている。

中でも注目したのが沖縄の伝統的な染色技法である「紅型」のデザインだった。紅型は琉球王国が終焉し、1879年に沖縄県が設置されるまでの450年間、東南アジアおよび東アジアの国々との海上貿易において重要な役割を果たした独自の文化である。

バオさんはその美しさと伝統に敬意を表したコレクションCONVERSE x BARO「Splendor of Ryukyu」を発表した。

「Splendor of Ryukyu」コレクション
「Splendor of Ryukyu」コレクション

Kilalaはこのコレクションを発表するまでのインスピレーションからプロセスについてバオさんに質問する機会を得ました。

① 「Splendor of Ryukyu」コレクションをリリースした理由を教えてください。

数年前、漢字文化圏を調べていた時に初めて「琉球」という名前を知り、その文化に空想的で神秘的なイメージを持ちました。

2019年3月のある日、フェイスブックの「Co Phong Quoc Te」というグループで琉球と日本の衣装を比較した写真を偶然目にし、その琉球衣装の色彩に魅了されました。さらにこれらは手作業で染められていることも知りました。この紅型を用いた琉球衣装のデザインは、今まで取り組んできた靴の装飾モチーフにぴったりだと直感しました。

それから、琉球王国について調べ始め、明王朝の建築や芸術文化と日本の影響をうけていることを理解しました。また、海外の沖縄県人コミュニティなど多くの人からの支援を受け、1995年に出版された沖縄の染色と織物の記した本「Splendor of the Dragon」を参考に、正式に「Splendor of Ryukyu」のコレクションに取り組みました。

CHIN-O 【金黄】
CHIN-O 【金黄】

② 文化を理解するには多くの時間を必要とし、そしてその知識と研究をデザインに取り入れることはさらに難しいと思いますが、 「Splendor of Ryukyu」コレクションを制作するのにどれくらいの時間がかかり、どのようなことが難しかったのか教えてください。

最後の作品の完成にはちょうど11カ月かかりました。琉球王国についての情報は少なく、沖縄在住者著書の本10冊を沖縄県庁に直接注文し、一般的な知識を得ました。
幸いなことにこれらの本はすべて英語と中国語で簡潔に書かれていたため、すんなりと理解することができました。

紅型の描くプロセス
紅型の描くプロセス
最大の難関は、紅型を描くプロセスを再現することでした。
基本的なプロセスは、防染糊を塗り、布面に文様をつけ、色付け後に糊を洗い流し完成させます。
しかし、琉球衣装に使われる生地とスニーカーの生地は全く違い、非常に厚い綿のスニーカーには紅型に使用する従来の防染糊ではうまくいかず、ちょうど良い配合にたどり着くまでに4カ月かかりました。
染料については、植物の根やミネラル色素、藍などの天然素材をアクリル絵具に混ぜるなどの工夫を凝らしました。
靴に紅型を塗る
紅型の技法を用いてスニーカーにデザイン施していく

③ このコレクションに描かれているデザインの意味について教えてください。

昔の紅型デザインはすべて独特の個性がありバラエティに富んでいました。そこから、3つを選びコレクションにしました。

一つ目は、ダンサーの衣装となっていたピンクで描かれた琉球の龍のデザインで、王国の黄金時代を象徴しています。これは参考にした本「Splendor of the Dragon」の表紙となっています。

MUMU IRU 【桃色】

二つ目は、王妃の衣装だった黄金の鳳凰のデザインです。
このロイヤルカラーである黄金色は樹皮で染められています。黄色地の衣裳は、王国の公式行事の衣裳として、特別な時だけに着用されたものです。琉球では龍と鳳凰が王権を象徴する重要な文様でした。

三つめは、「藍型(えーがた)」という琉球藍でのみ染める模様染です。
これは色華やかな紅型に対し、渋さと落ち着きのある藍色で海や植物、魚、鳥など身近なものをデザインし庶民の服に使われていました。
残念ながら、琉球藍は手に入れることができなかったので、コバルトブルーのインクを混ぜたベトナムの藍粉を使いました。

EIGATA 【藍型】
塗料に工夫を凝らし発光するようにして描いた龍

④ 文化的な概念を追求するときに重要なことは何ですか。それをうまく行っているブランドがあったら教えてください。

最も重要なことは、その文化の本当の姿をきちんと認識し尊重することです。

コンバースは、日本市場に合わせて靴のデザインを変えることで非常に成功したブランドで、独自のアイデンティティを維持しています。歴史的および文化的な象徴をうまく融合して新たなものを生み出しています。

2014年のキャンペーンでは、錦織の代表である西陣織を使用し多くの支持を得ました。また、墨絵や鯉をモチーフにしたものもありました。

また、ナイキやアディダスは、「Chinese New Yearコレクション」で干支をテーマにしたデザインを毎年発表し大成功をしています。

西陣織を使用したコンバース ⓒ コンバース

⑤ 最近「文化の盗用」という言葉をよく耳にしますが、バオさんは今までの経験と通してどのように理解していますか。また、「文化の尊重」と「文化の盗用」、これら2つの概念の違いは何ですか。

他の文化を自分の文化と主張する場合、その文化の道筋や関係性、どのように取り入れるかによって「盗用」か「尊重」かが決まると考えています。

例えば、外国の要素(建築、典型的な衣装など)をその起源に言及せずに取り入れてベトナム文化として促進する場合、彼らがベトナム人であることを認識するかどうかにかかわらず、それは意図的に文化を盗用していることになります。

個人的な目的のために別の文化の価値を利用することは、文化を学び尊重することとして理解できますが、商業的に利用すると偏見を引き起こす場合もあります。
例として、西洋のデザイナーが東洋の文化に触発されたとき、彼らにその文化に対する理解と知識がないと、意図せずに東洋の文化の誤った知識を広めてしまうことになります。そのため、その国の文化を知らない人は、見方を間違え、無意識のうちにその国の特徴だと思ってしまいます。

⑥ 今後BAROとの計画がありますか。また、他に日本関連のコレクションを計画がありますか。

今はベトナムに帰国したばかりで、購入した骨董品の修復作業を行っています。
日本にはまだたくさんの伝統工芸品があるので、将来のコレクションのインスピレーションになると思います。京友禅を染色技術の研究をし、近い将来、発表するつもりです。

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