リニューアルウェブサイト体験版はこちら

日本人と米

Culture    • 2018年02月27日

Text: Senda Mayu

あなたは、ベトナムの料理を食べて、「ベトナム人に生まれてよかったなぁ」と思う瞬間はあるだろうか?日本人の多くは、白いお米を食べたとき、「日本人でよかったなぁ」と感じる。おかずなしで米を食べることもあるほど、その味わいを愛していて、白いごはんが一番のごちそうだ、と言うことすらある。米は、さまざまな料理を生み、慣習や伝統を生み、今の日本を形成してきた。そんな日本の米文化を知ればきっと、日本料理や日本の米がますます味わい深く、おいしく感じられるだろう。

日本人と米

(Photo: )

日本の歴史を支えた、米文化

米作りの文化は、3000年前にはすでに日本に伝わっていたと言われている。最初はアジアから日本の南部・九州に入ってきた。そして、日本の土地と気候によく適していたこと、安定的に収穫できること、長期保存が可能なことから、徐々に日本列島全体に広がっていった。

春に田植えをする

(Photo: )

春に田植えをし、夏に稲の世話をし、秋に収穫をする。四季がある日本で、このコメ作りのサイクルが、人々の生活に定着した。豊作への祈願や感謝によるさまざまな祭りが生まれ、米への感謝の気持ちから、正月に餅を食べる風習ができた。稲作を中心に「社会」の基礎ができ、栄養が豊富な米のおかげで人口が増えた。さらにお米はかつて領主や幕府に納める年貢(Nengu)(税)としての役割も持っており、経済の中心でもあったのだ。

ごはんが主役の「和食」文化

「和食」文化

(Photo:

ごはんを主食とし、汁物を一つ、おかずを二つか三つとする「一汁二菜」(もしくは「一汁三菜」)のスタイルが、日本の食事の基本の形。おかずのひとつを肉や魚にし、残りのおかずは野菜中心の料理に。汁物には野菜や海藻などの具材を入れて足りない食材を補うと、自然と健康的な献立となる。しかも、昔ながらの日本料理は、焼き魚や煮物など、油脂が少ないメニューが多い。この食事スタイルは、理想の栄養バランスだといわれている。

現代の日本ではパンや麺の料理も増え、米の消費量が減ってきていることが懸念されている。しかし「和食」は2013年にユネスコ無形文化遺産に登録され、今またその価値が見直されてきている。

日本の米の品種

日本の米は「ジャポニカ種」。ベトナムで作られている、世界の米生産量の8割を占める「インディカ種」よりも粒に丸みがあり、もっちりと粘り気が強い。米の質は、アミロース(amylose)というでんぷんの含有率で左右される。パラパラとした食感のインディカ米が22-28%であるのに対し、ジャポニカ米は15-18%ほど。これが食感と味の違いを生んでいる。ちなみに、アミロースが0%だと、もち米になる。

日本の米

(Photo: )

日本で最もおいしい米言われているのが、新潟県魚沼産の、コシヒカリという品種。冬は豪雪となる魚沼の美しい雪解け水と、昼と夜の大きな寒暖差が、日本の最高級の米を育んでいる。日本の米の品種は300種類以上あり、全国各地で地域の特性を生かした米が作られている。有名なものは「コシヒカリ」、「あきたこまち」「ひとめぼれ」など。

日本人料理長が語る「お米とは?」

「日本人にとって、お米は空気のようなもの」と語るのは、ホーチミンの日本食レストラン「花蝶」の料理長・加藤氏。日本人にとっては、なくてはならないものであると同時に、あって当たり前のものだということだ。日本の米はジャポニカ種という品種で、ベトナムで多く食べられているインディカ種とは違う品種。もっちりと粘りがあり、甘みがあるのが特長の日本のお米を、「ベトナムの人にぜひ食べてほしい。このおいしさを知ってほしい」と加藤氏は言う。ベトナムでもジャポニカ種が栽培されているが、気候や水質の違いから、やはり味わいが異なる。実家が農業を営み、小さい頃から米作りの手伝いをしてきた加藤氏は、米への愛情も人一倍だ。まだコストの関係で実現できないが、いつか「花蝶」で使うお米を日本産にするべく、働きかけていくという。そんな加藤氏の好きな「ごはんの友」は…。「漬物と味噌汁があれば十分。シンプルなおかずでこそ、お米のおいしさが引き立ちますから」。日本人にとっては、お米そのものがごちそうなのだ。

米が育つ場所は田んぼ

残したいSatoyamaの風景

今、「里山」という日本語が世界共通語になりつつある。里山とは、人が暮らす集落と、それを取り巻く自然すべてのこと。人が生活しやすいよう、人々が整備の手を入れながら育んできたその場所には、生き物たちの豊かな生態系が息づいていた。しかし、昔は当たり前だった人と自然とが共存する風景は、いつしか過度な伐採や急激な人口の変化によって、失われつつあった。生き物たちの生態系と美しい自然の風景を取り戻し、後世に残していこうとする里山保全活動は、今、日本のみならず世界中で取り組まれている。

田んぼももちろん里山の一部だ。春から夏にかけて、田んぼにたたえられる美しい水が、多くの生き物たちを育む。昆虫や魚、貝やカエル、そしてそれらを餌とする鳥たちなど。例えば水が汚染されていたり、大量の農薬が使われている田んぼでは、生き物は生きることができない。餌のない場所に鳥たちもやってこない。わたしたちにとって「安心、安全、おいしい」米を作るということは、生き物たちと共存するということであり、大切な里山の風景を守るということなのだ。ベトナムのイエンバイ(Yen Bai)やサパ(Sa Pa)など北部の方には、昔ながらの暮らしを営む少数民族が暮らしており、美しい棚田が広がっている。日本にも各地に棚田があるのだが、労働力不足や生産性の厳しさから、荒廃してゆく棚田が後を絶たない。しかし、里山の象徴ともいえる棚田の美しい風景を失わないために、現在はさまざまな保全活動が行われている。

熊野にある棚田

(Photo: )

春の田植え、夏のあぜ道、秋の黄金色の稲穂…。田んぼの風景は、人々に四季を実感させてくれる。文化も違い、言葉も違うベトナムと日本だが、未来に残すために守ってゆくべき風景は同じだ。

SENDA MAYU/ kilala.vn

padding
padding
padding
padding
KILALA vol.45

22万ドン以上のお支払いで、4号分のキララをお届けします。さらに素敵なプレゼント。

KILALA vol.44 KILALA vol.44
KILALA vol.43 KILALA vol.43
KILALA vol.42 KILALA vol.42
KILALA vol.41 KILALA vol.41
KILALA vol.40 KILALA vol.40
KILALA vol.39 KILALA vol.39
KILALA vol.38 KILALA vol.38
KILALA vol.37 KILALA vol.37
KILALA vol.36 KILALA vol.36
KILALA vol.35 KILALA vol.35
go Top