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松下政経塾-将来の日本を背負う若者を育てる

Study in Japan    • 2018年02月01日

Text: Thu Hien/ Photo: Japan Circle, Tran Mai The Anh/ Translator: Inako

世界に今必要なのは未来を支える真のリーダー

日本の経済が安定成長期へ転換した1979年頃、経営の神様と呼ばれる松下幸之助氏(85歳)は「今の繁栄は真の繁栄ではない」と訴え、それがもうすぐやってくるバブル時代への予言のようだと言われました。

松下幸之助氏

そうした状況の中、松下幸之助氏は次代の国家指導者を育成すべきだと考えつつ、70億円の私費を投じて松下政経塾を創設しました。私塾を連想させる名前だが、政治塾として活躍していました。2011年、1期生の野田佳彦氏が日本の第95代内閣総理大臣として入閣し、そして玄葉光一郎氏や前原誠司氏、原口一博氏、福山哲郎氏、逢沢一郎氏、高市早苗氏などの松下政経塾出身者も政府の要職に就任することになったことにより、塾の存在は世界中から注目されました。パナソニックの創業者兼松下政経塾の創立者であった松下幸之助氏の基本理念が繰り返し批判され、もう彼の夢が叶ったのではないか、という声が出てくるようになりました。

もし松下幸之助氏が生きていたなら、微笑んだでしょう。そもそも、元塾生が政治界の頂点にまで出世した当時、松下政経塾からはお祝いなど出す気が一切起きませんでした。なぜなら、遠き未来の夢を実現させるための時間の中で、36年という時間は決して長いものではなく、卒塾生のただ一時の成敗により、その塾を評価するわけにはいかないでしょう。松下幸之助氏が残した「政治であれば、宮本武蔵みたいな政治家になったらいい」という発言を耳にすれば、松下政経塾は政治家を育成・輩出をする事を目的とする政治塾だと思ってしまう人が多いかもしれませんが、世界に必要なのは政治家ばかりでなく、経営者・教員・マスコミ関係者などの各界の人材だ、という考えの松下幸之助氏は思ったより先見の明があったと言えるでしょう。2015年4月1日に発表されたデータによれば、260名の卒塾生の中で、政治の道に進んでいる116名のほか、経営者82名、研究者・大学教員・マスコミ関係者48名、医者・弁護士・NPO関係者14名もそれぞれの立場で活躍しているそうです。

松下政経塾で学習している塾生の関心は、専ら国を発展させるためにはどうしなくてはならないか、よりよい世界をつくるためには何が必要かについてです。お互いと話し合うことにより、一人ひとりはこれらの共通の目標を達成するため、自分の行きたい道を模索しながら進んでいます。募集定員の定めはありませんが、ますます日本も世界も混迷している中で、時代を変革する新たなリーダーを育てたいという塾主の情熱の炎が、消えることが一時もないと言えるでしょう。


2015/11/24に、Saigon Entrepreneurs Clubと、Ree Corporation、松下政経塾、 Japan Circleがコラボレーションし、ホーチミン市にて“Experience sharing in training leadership of Matsushita – Japan”というセミナーを開催。ベトナム人・日本人の約150名の営業担当者が参加しました。

古山和宏氏

松下政経塾塾頭の古山和宏氏 (Photo: Japan Circle)

本セミナーでは、塾頭の古山和宏氏が、松下政経塾の教育方針と松下幸之助氏のリーダーシップに関する理念について講演。通訳を務めたのが、唯一のベトナム人塾生、創立36年の歴史を持つ松下政経塾の初めての留塾生・Tran Mai The Anh氏です。彼に、松下政経塾についての感想のこと、彼が抱く夢のこと、いろいろな話を聞きました。


松下政経塾の入塾条件は、国籍不問で、22~35歳。とはいえ、塾生になるにはそんなに簡単じゃないですよね?

面接試験では、面接官に、自分が大きな志を抱き、今後もそれを実現させていきたく、その手段などを提供してくれる場としてここが最適だという熱い思いを伝える必要があると思います。これは、松下先生が生時、「運」と「愛嬌」を塾生採用の基準としたことと同じです。「運がいい」人とは、自らの使命を見極め、それを果たすことを生きがいとする人たちです。「愛嬌」とは人々を引きつける、どんなリーダーにも必要な力です。自分にはそういう運と愛嬌があると思えば、松下政経塾の門をたたいて下さい。


Tran Mai The Anhさんの「志」は何ですか。

現在のベトナムだと、教育、特に社会に貢献できるような人材を育成することを、国家戦略としてもっと重視するべきだと思います。ここの教育模型、そして塾生の方々に接したことにより、母国で同じような教育環境をつくりたくなりました。無論、日本とベトナムでは歴史も社会環境も違うため、そのまま当てはめるわけにはいきません。しかし、松下政経塾の基本的な狙いといえば、若者たちに、自らの夢について話し合い、これらの夢を育て合う環境を提供することだと思います。


塾生は4年間、資金の給付を受けられると伺いましたが、実際はどうですか。

在籍中は「生活の心配なく、研修に打ち込んでほしい」という松下先生の思いから、毎月21万円(1~2年度)又は26万円(3~4年度)の「研修資金」が給付されるほか、毎年100万円の「活動資金」が別途支給されます。

Tran Mai The Anh氏

松下政経塾の唯一のベトナム人塾生・Tran Mai The Anh氏

4年間で、塾生は何を学びますか。

カリキュラムは「研修」と「研究」の二つに分けられます。研修カリキュラムは茶道・書道など日本の伝統に関する教育から、100kmを24時間以内で完歩するといった体育会系的なものまで幅広く用意され、研究カリキュラムは大体政治学・経済学・財政学などの専門的なものです。常勤の講師は存在せず、教授や政治家、経営者、研究者などの各界の有識者、そして卒塾生を講師として迎えています。塾生は各自の研修テーマに基づき、自分で研修を組み立て実践しなくてはならないのです。江戸時代の「剣聖」と呼ばれる宮本武蔵氏と同じです。彼は師を持たなかったのですが、自分で剣の術を会得し、師となりました。彼の「自修自得」というその精神は本塾の教育方針となり、塾生一人ひとりが宮本武蔵のような人となってほしいというのが松下先生の希望でした。


在塾中に身に付けた経験の中で、最も価値あることは何ですか。

それは、ここでの経験を通じ、自分の人生で果たしたい使命を見つけたということです。考え方は人それぞれですが、私にとって、人生で夢を持つことが、尊敬すべき、価値あることです。


ありがとうございました!


THU HIEN/kilala.vn

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