日本人にとって、羊羹といえばとらやであり、とらやといえば羊羹だ。手土産に持っていけば、間違いなく喜ばれるという逸品。手にとればずっしりと重みがあり、包みを開ければほんのり赤みを帯びたやわらかな黒に吸い込まれるよう。ひと口食べれば、小豆の風味と、あと味のよい上品な甘さが口の中に広がる。原材料は小豆、砂糖、寒天のみ。こだわりの原料と伝統の技で、宝石のような菓子を創り上げている。
とらやの歴史は古く、創業は16世紀前半、京都の地でのこと。1586年に即位した後陽成天皇にの御在位中より、御所御用を勤めてきた。1869年には東京へも出店し、現在まで約500年、羊羹を始めとする数々の和菓子を創り続けている。
とらやを代表する商品は、小倉羊羹「夜の梅」。梅味の羊羹なわけではなく、切り口に現れる小豆の粒が、夜の闇に浮かぶ梅の花のようであることから名付けられた。商品名にまで日本人の情緒が表現された歴史ある羊羹、ぜひ一度ご賞味を。
(Photo: Toraya)
とらやの春の生菓子
春時計
黄色いそぼろと赤い花で、花時計を表現。日本の春の暖かさを感じる。
(Photo: Toraya)
手折桜
手で折って持ち帰ってしまいたくなるほど美しい、という意味が込められた桜の形。
桜餅
写真の桜餅は、クレープのような生地であんを包み、塩漬けした桜の葉でくるんだもの。春に人気のひと品。
(Photo: Toraya)
注文用のカタログとして使われたというお菓子のデザイン帳・「菓子見本帳」。古くは1695年から数々伝わる。今見てもうっとりするほど色あざやか。現在でも作られている菓子もあるという (Photo: Toraya)
SENDA MAYU/ kilala.vn
TORAYA
東京、静岡、京都にある9店舗の直営店のほか、全国のデパートや羽田・成田空港に店舗がある。休業中の赤坂店は、2018年にリニューアルオープン予定。虎屋菓寮という喫茶が併設されている店舗もあり、写真の京都一条店では、素敵な庭園を眺めながら、ゆったりとお菓子をいただける。