知床
Travel
Text: Senda Mayu/ Cooperation: ASEAN_Japan Centre/ Photo: Shiretoko Shari-cho Tourist Association
北海道東部に位置する、オホーツク海に細長く突き出た半島。Shiretokoの名前の由来は、アイヌ民族の言葉で、地の果てという意味の「Sir etok」。
流氷がもたらす、命の循環
北海道の知床半島。希少な野生動物や植物など、日本屈指の大自然が残る。1964年に半島が「知床国立公園」に指定され、2005年に、沿岸から3kmの海域22.300haを含む総面積71.000haが世界自然遺産に登録された。海と山が育む壮大な生態系、絶滅寸前の動植物が生息する豊かな生物多様性、それらを科学的調査に基づき保護管理してゆく体制が評価され、登録に至った。
冬の知床の海は、「流氷」に覆い尽くされる。日本では最北の地である北海道でも、流氷が流れ着く地域としては世界的には最も低緯度で、最も暖かい。ロシアと中国の国境を流れるアムール(Amur)川で作られた流氷は、ゆっくりと南下し、毎年1月下旬頃に知床半島に到着する。大海を旅して流氷がつれてきたたっぷりの栄養分で、プランクトンが豊かになり、そのプランクトンを魚たちが食べ、その魚を動物たちが食べ、動物たちの糞や死体は土に返り、山や森をまた豊かにする。このような、海と陸の命がつながった生態系のサイクルがひとつの場所で見られるのは極めて珍しく、それこそが知床の価値を高めている。
1月下旬から3月中旬にかけてやってくる流氷。地球温暖化の影響により、その量は年々減少しているという
クジラやシャチ、トド、アザラシたちが魚を求めて集まる海。オショロコマという北海道にしか生息していない川魚やマス、サケが泳ぐ川。ヒグマ、シカ、キツネ、リスたちが暮らす山。フクロウやワシ、カモメたちが飛び交う空。そして全てを包み込む木々や花などの植物たち。知床では、地球のありのままの姿に出逢うことができる。未来のためにわたしたちがすべきこと、守るべきものを気づかせてくれる。