佐藤宏氏：仙台牛を世界に届ける

はじめまして。今日に至るまでの沿革をご紹介いただけないでしょうか。　

私の先祖は昔、養豚農場を営んでいました。しかし、明治時代になり、肉食禁止令が廃れ、牛肉の需要が増加したことにより、牛肉を事業の中心とするようになりました。そして主に仙台牛を扱う専門商社として現在の株式会社マルイを創業し、私はその5代目として事業を引き継いでいます。

和牛といえばベトナムでは神戸牛が有名ですが、仙台牛について教えてください。

神戸牛はベトナムで日本の最高級牛肉として認知されていますが、その生産量が非常に少ないため、日本人でもなかなか味わうことができないのが実情です。現在、日本最大の牛肉生産地域は北海道であり、毎年の平均生産量が512.500トンです。これに比べ、仙台は81.000トンで全国7位の生産量となっています。仙台牛が市場に流通するにあたっては、厳しい審査を経る必要があります。これらの非常に厳しいプロセスにより、仙台牛は、最高級のA5の牛肉という呼称を得ているのです。

仙台牛の品質を評価する基準は何でしょうか？

仙台牛とは、黒毛和種であり、宮城県で肥育され、日本食肉格付協会によって認められる牛肉です。さらに（１）霜降りと赤身のバランスの程度が良く、（２）肉質がやわらかで、（３）肉がきめこまやか、そして（４）色と品質が良いといった基準を満たす場合のみ、仙台牛の呼称が許されます。

仙台牛はどのようなところで育てられているのでしょうか。

草原、山、海、高原などの豊かな自然に恵まれた宮城の地、そして、この宮城のきれいな水と空気は牛を育てるのに適した環境を作り出しています。お米の生産も宮城県は全国第 5 位であり、その稲ワラは牛の飼料として利用されています。また、お米や稲、稲発酵粗飼料などのエサは牛の肥育に役立っており、もち米や米と食品を混ぜて作ったものも肉と脂肪の品質向上につながっています。

A5に格付けされる仙台牛を育てるために、どのような工夫をしていますか。

A5を満たす飼養頭数は全体の約70％を占め、残りはそれより低いランクに分類されます。仙台牛は、出生後の3カ月まで母乳とミルクで育てられ、4カ月からは粉砕された稲ワラが与えられます。牛が成長すればするほど丁寧な育成が必要になり、体を移動させるのも避けています。採肉に最適な期間は28～32月目で、そのときの平均体重は850キロ程度です。採肉の数ヶ月前、牛はほとんど動かず、赤身と霜降りの割合がバランスよくなるように音楽を聞きながらマッサージを受けます。また重量を増やすためにバランスの良い食事とリラックス状態を確保することが大切です。牛は冬になると食欲が増し、脂肪をたくさんつけることから、10月から1月にかけて一番美味しい肉質となるとされています。

仙台牛の価格は他のブランド牛と比較していかがでしょうか？

A5の仙台牛は１キログラムあたり 約200 ドルであり、A5の 神戸牛の5分の１位です。ただし、牛肉の最上級部位である「リブアイ」の肉の場合は、一頭の仙台牛から5〜6キロのみしか取れず、平均価格は１キログラムあたり約1,000ドルとなります。弊社では、牛の採肉後にすぐマイナス25度の温度で凍結し、それから日本をはじめ、世界中の国々に出荷しています。適切にパッケージし、マイナス25度の温度で凍結すると、10年後まで品質を維持することができます。

2016年からベトナムでも仙台牛を紹介し続けていると伺いましたが、ベトナムを含む新たな海外市場についてどう思われますか？

日本市場以外で、弊社の仙台牛が最も売れたのは香港市場です。ベトナムは、新たなターゲットでしたが、短期間でうれしい結果が出ました。現在、ビエンホアとホーチミン市内にはA5の仙台牛を扱うレストランが5軒もあります。2018年1月、弊社は宮城県と連携して、ベトナムの消費者がA5の仙台牛を体験できるイベントを開催するなどしました。

おすすめの仙台牛の楽しみ方を教えていただけないでしょうか。

一般的な楽しみ方としては、短時間に高温で焼き上げること。表面から肉汗が出てきたら、数秒でひっくり返すと中身の鮮度とおいしさを保つことができます。また、生わさびをつけると、お肉の甘さと口の中で溶けるような脂肪のおいしさをいっそう感じることができ、味わい深くなります。他にも、すき焼きやしゃぶしゃぶでは出汁でお肉をおよがすようにし、野菜を加えることで、もっと美味しく食べられるでしょう。

Nguyen Dinh/ kilala.vn