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どのようにして、足利が5S活動の「聖地」となったのでしょうか?

Office Life    • 2018年05月06日

Text & photo: Dong Vy/ Translator: Arai Yuuko

キララ編集部は、日本貿易振興機構(JETRO)の招待で、2016年3月下旬の数日間、栃木県の足利を訪れました。春先で、まだ肌寒く、桃や椿の季節は終わっていました。また、桜はまだ咲いておらず、丘には枯れて、落ちた茶色の枝が一面に広がっていました。足利の魅力は豊かな自然だけではありません。現在、足利は、独自の5S活動を成功させており、世界中から注目されているのです。

足利

栃木県足利市 (Photo: osshi/PIXTA)

トヨタが成功した1970年代以降、5S活動は、日本はもちろんのこと、世界中でも広まってきました。5S活動を取り入れた企業は、無駄を省き効率を上げることを目標に掲げ、社員や時間、職場環境の管理の分野で効果が出るよう取り組んでいます。しかし、実際は5S活動を成功させた企業は、日本でも、多くはありません。確かに、5Sは取り入れやすいのですが、確実に進めていくのは難しいのです。ベトナムでは、基本的なレベルの5S活動しか展開できてないのが現状です。そのため、私たちにとっても、足利の5S活動から学ぶべきものは多いのではないのでしょうか。

足利市には150以上もの企業が操業していて、足利商工会議所の支援で様々な企業が一団となって、5S活動で成果を出しています。自分たちの経験を共有し、5Sを普及させるため、多くの人々が熱心に活動されています。そして、現在では、5S活動を学ぶため、日本国内からは100団体以上、海外からは10団体以上が毎年、訪れています。そこでは、現場での5S活動がどのように進められているのか、また、それぞれの役職(従業員、班長、課長、工場長など)に合った5Sの活動についても学ぶことができます。

工場内の「テーマパーク」

オグラ金属工業株式会社の工場では、自動車や新幹線などで使用される、アルミ製とスチール製の部品が製造されています。こちらの工場には、それぞれの部門の特徴やニーズあった5S活動が行われるよう、「テーマパーク」が設けられています。従業員のやる気を引き出すため、自らの作業場を飾りつけています。また、作業工程表は従業員(大半は海外から働きにきています)が見てすぐに把握できるよう、高さは1.3m以下と見やすい位置に設置しています。作業に必要な道具には、値段が付けてあり金額順に並べられています。そうすることで、従業員は道具の在庫状況が一目でわかり、コスト意識が高まります。それ以外にも、会社の入り口付近に、1922年創業当初から開発してきた製品を「博物館」のようにして飾っています。

オグラ金属工業 取締役副社長の小倉乃里子氏は、すべての部門で作業工程や職場環境の改善が自主的に進むよう、様々な5S活動を行っているとおっしゃっていました。

オグラ金属工業の駐車場

オグラ金属工業の工場と駐車場の全ての屋根には、再生可能エネルギーの活用と資産運用のため、ソーラーパネルが設置されています (Photo: Dong Vy)

事務ファイルや文具用品の棚

事務ファイルや文具用品の棚の整理も5S活動の一環として、行われています。ここでは、一番上の棚は、普段使う道具は置かず、テーマパークの絵などを飾っています (Photo: Dong Vy)

掃除用具

掃除用具は、見えない所に片づけるのはなく、「ディスプレイ」ように置いています。そのおかげで、いつも整頓されています (Photo: Dong Vy) 

5S活動は、会社の利益ではなく、人のため

深井製作所の5S活動

株式会社深井製作所は、開発部門、設計部門、自動車部品製造部門、設備部門に分かれています。どの部門の従業員も、決められた通り、機敏に働かれています。

松永宗德氏

足利商工会議所主催の、5S活動に関する会議で、発言されているジェトロ栃木貿易情報センター所長、松永宗德氏 (Photo: Dong Vy)

1938年の創業時から、深井製作所は、何度も5S活動に取り組んできましたが、足利流5Sを取り入れた2007年までは、失敗を繰り返していました。深井製作所の専務取締役の福田典穂氏は、「以前は、利益を第一に考え、5S活動を行っていました。当時は全ての部門で、5Sの意識が強く求められたことにより、失敗を見つけた際には、叱りつけるといったこともあったそうです。そのため、従業員はストレスが溜まっていました。5S活動の会議では、工場長も5S活動が上手く進められず、彼もまた、厳しい指摘を受け、気を落としていたようです。今は、働く人のやる気を第一に考え、5S活動を行っています。5Sは、自分の失敗を反省するものではなく、主体的に行うものです。このように考えを変えてからは、従業員が気持ちよく働くため、一人ひとりが考え、5S活動を進めてきました。すると、物事が順調に進んでいったのです。当然、今も、毎日5S活動を実施していますが、成功しなければならないとは考えていません。」とおっしゃっていました。

深井製作所の工場を訪れた、ベトナム記者団

深井製作所の工場を訪れた、ベトナム記者団

この人を大切にするという理念に基づいた5S活動は、深井製作所やオグラ金属工業にとって重要な位置を占めており、他の地域にはない特徴となっています。この5S活動が浸透しているからこそ、足利は、世界レベルの技術をもった、工業都市のひとつとして、強い印象を世界に与えているのでしょう。

実際、足利がいかに5S活動に熱心に取り組んでいるか、私たちも肌で感じることができました。

5S とは何でしょうか?

5Sは、以下の5項目に沿って、職場環境を管理していく方法で、この5Sという名称は、それぞれの頭文字「S」をとってネーミングされました。

1. 整理:必要なものと不要なものを分類し、要らないものを捨てる。

2. 整頓:取り出しやすいよう、道具や工具を決められた場所に配置する。

3. 清掃:きれいに清掃をし、安全で、成果がでるような職場環境を維持する。

4. 清潔:上の3Sの効果を確実なものとするため、確認作業を行う 。

5. 躾:あらゆる部門の従業員一人ひとりが、主体的に5S活動ができるよう、指導をする。

足利流5S活動の特徴は?

典型的な5S活動は、整理、整頓、清掃の順番で進みます。足利流は、整理、清掃、整頓という、整頓と清掃の順番を入れ替えているのが特徴です。また、皆が気持ちよく働ける職場作りを、5S活動の目的としているのも見逃せません。

世界5Sサミット2016

本物の5Sを導入したい、足利流5Sの現場を視察したいという世界中の経営者の要望により、これまで、足利で世界5Sサミットが定期的に開催されてきました。第3回の世界5Sサミットは、2016年11月10日~11日に行われる予定です。足利の5S活動の実績を目の当たりにできるだけでなく、ベトナム人経営者が、世界中の経営者と5S活動について意見交換ができるまたとない機会となるでしょう。

DONG VY/ kilala.vn


【訂正とお詫び】 
本誌19号54~55ページの掲載記事において誤りがありました。 訂正させていただくともに読者の皆様にはお詫び申し上げます。

足利商工会議所

3-2757 Tori, Ashikaga, Tochigi, 326-8502
acci@watv.ne.jp
www.ashikaga.info/acci5s
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