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四季を愛でる和の心が生み出した「和食」

Cuisine    • 2018年11月01日

Text: Senda Mayu/ Photo: PIXTA

今、ベトナムでも和食がどんどん浸透してきている。都市部を歩けば、日本料理のレストランをあちこちに見つけることができる。魚を生で食べることや、醤油や味噌といった調味料の味わいに、慣れてきた人も増えたのではないだろうか。四季のある小さな島国で生まれた料理の数々は、独創的で、繊細で、美しい。職人技が光り、みずみずしい旬の素材を堪能する。日本の食文化を知ることは、日本そのものを知ること。今号は、世界に誇る和食の魅力に迫りたい。

世界遺産・和食

和食とは?

和食

(Photo: yukijume/PIXTA)

2013年12月、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された。フランス料理、地中海料理、メキシコ料理、トルコのケシケキに続き、世界で5例目の食文化登録となった。無形文化遺産に登録されたのは、「日本の風土と密着して形成された、独特の食文化」。何か特定の料理をさすのではなく、食文化そのものだ。それは、人々のくらしそのものともいえる。土地の気候風土に合った食材や食べ方が自然とうまれ、長い年月を超えて継承されてきたのだ。

日本の農林水産省は、和食の特徴として、以下の4つをあげている。

① 多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重

② 健康的な食生活を支える栄養バランス

③ 自然の美しさや季節の移ろいの表現

④ 正月などの年中行事との密接なかかわり

和食

(Photo: marucyan/PIXTA)

和食というと、真っ先に寿司や天ぷらが思い浮かぶかもしれない。しかし、和食の幅は広い。懐石料理に代表される伝統的なものから、お米に焼き魚、そしてそばやうどんなどの麺類。さらには、ラーメンやカレーなど、外国の料理を日本独自の料理に進化させたもの、オムライスやコロッケなど、一見洋食だけれども日本で生まれた料理。高級料亭でいただく料理から、家庭料理に至るまで、これらすべて、「和食」というカテゴリに入る。

現在の日本には、ベトナムに日本料理が浸透してきたのと同様に、海外の多種多様な料理が入ってきている。さらに、コンビニやファーストフード、レトルト食品の台頭などによって、食生活も昔とは一変した。日本国内では、世界遺産の登録をきっかけに、改めて和食というものを見直そう、次世代へ継承していこう、という意志が強まることが期待されている。

四季と素材

素材
(Photo: Osho/PIXTA)

四季があり、豊かな自然に恵まれた日本。和食においては、季節を象徴する旬の食材を使うことが大切にされている。食材は旬の時期に味も栄養価も最も高まるといわれ、旬の食材を食べることは、身体にとっても理にかなっている。そして、良い時季の素材の味や食感を最大限に生かすのが和食だ。日本には、「だし」という文化がある。昆布やかつお節からうまみを煮出した汁を使い、最小限の味付けで素材を引き立てながらも、深みのある味わいを創り出す。四季を愛で、素材を慈しむ和の心が生み出した、独特の料理技術だといえる。

和食の「5」

和食において、大切にされている「5」という数字がある。

【5法】生(切る)、煮る、焼く、蒸す、揚げるといった調理方法のこと。伝統的な懐石料理には、これら全ての調理法の料理が必ず入っている。

てんぷら

(Photo: yuuyuu/PIXTA)

【5味】酸味、苦味、甘味、辛味、塩味の5つの味のこと。これらをバランスよく組み合わせて作ることが大切。

【5色】白、黒、黄、赤、緑の5色のこと。白は清涼感、黒は引き締め、黄と赤は食欲を誘い、緑は安心感を与える色とされる。彩りがよい料理ほど魅力的で、栄養バランスも自然と整う。

5色

(Photo: yuuyuu/PIXTA)

【5適】適温:料理を一番おいしい状態の温度で出すこと。温かいものは温かく、冷たいものは冷たく。適材:食べる人に合った素材を選ぶこと。料理を出す前に「食べられないものはありますか」と聞くこともおもてなしのひとつ。適量:多すぎず、少なすぎない、ちょうどよい量であること。適技:技にこりすぎず、かといって淡泊にもならないようにすること。適心:食器やテーブル、部屋の装飾など、料理以外の部分でももてなしの心を大切にするということ。

そして、料理をいただく側も、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚といった「五感」の全てを使って味わう。これらの「5」は、和食に限らず、料理全般においても、とても大切なこと。料理やもてなしの基本として、わたしたちも是非心に留めておきたい。

SENDA MAYU/kilala.vn


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